永沢トムのブログ

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HANA-BI 『暴力の対義語』 北野武 

こんにちは。

今回は"世界のキタノ"こと北野武監督の作品です。

本作品はヴェネツィア国際映画祭にて金獅子賞を受賞しており北野映画の代表作として有名です。

ジブリ音楽で有名な久石譲が音楽を手掛け、唐突な暴力シーンのバックグラウンドで流れる彼の静かで美しいメロディーは、この映画をただの暴力映画で終わらせない芸術的な側面を引き出しています。

この映画のサウンドトラックもあるのでチェックしてみてください。 

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Hana-Bi (From

Hana-Bi (From "Hana-Bi")

 

 

映画の説明

北野武演じる、元刑事の西の逃避行を描いた作品で、彼と元同僚の友情、不治の病を患う妻との愛、そして彼自身の優しさなどがメインテーマとなっている。

キャッチコピーは「その時に抱きとめてくれる人がいますか」

監督、脚本、演出、編集をはじめ、劇中に挿入される絵画まで北野武が手掛け、彼の多彩な才能が存分に発揮された作品となっている。

 

感想 「暴力の対義語」

北野映画といえば「ヤクザ」「暴力」である。この作品中でも多くの人が殺し、殺される。時には目を背けたくなるようなグロテスクなシーンもある。

私にはこの作品が北野監督が「暴力の対義語」を表現しようとした作品であると感じられた。

三省堂の反対語便覧で調べてみたが暴力の対義語(反対語)は存在しないようである。

北野監督はその度を超えた暴力を描くことによってその裏にある思いを強調したかったのだと私には感じられた。

西の妻への愛、下半身不随になった元同僚への友情、亡くなった元同僚への義理と贖罪。西自身は優しく、人間らしく、義理深く、そして誰よりも愛に溢れた人物であり、それらの感情が度を超えたとき、その真逆にある暴力というものに手を染めざるをえなかった。

両極端に見える二つの事物は実は表裏一体で、片方を極限まで持っていかなければもう片方に届くことはない。

一見するとただの暴力映画にも見えるこの作品は北野監督の暴力に振り切ることでその反対にある愛、友情、優しさ、というものを表現しようという意志が感じられた。

最後のシーンではその愛と暴力が1つになる。

そしてこの作品中に流れる久石譲の静かで美しい音楽もまた、暴力と不思議な対比があり、芸術もまた暴力の対義語になり得るように感じた。

 

相反する2つの極端な事物を芸術として融合し、昇華させた素晴らしい作品である。

 

コメントや訂正があればよろしくお願いします。

 

Tom Nagasawa