永沢トムのブログ

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パリ、テキサス 『男の生き様と赤』 ”Paris,Texas” 

こんにちは。

初めての投稿です。

思い入れのある小説や映画はいくつかあるのですがそれらはいずれ記事にするとして、今回は最近見た映画「パリ、テキサス」"Paris,Texas"について書きたいと思います。

 

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 映画の説明

この作品は1984年にヴィム・ヴェンダース 監督によって西ドイツ、フランス合作によって撮られた映画で一人の男の妻子との再会と別れを描いたロードムービーである。

フランス、ドイツの共同作品ということもあり、私はてっきり、フランスのパリとアメリカを旅するロードムービであると物語の中盤まで思っていた。しかし実際はパリとはテキサスの地名であり、結局登場人物はパリの写真を見るだけでテキサスのパリには一度も訪れない。

感想 「男の生き様と赤」

この作品は好き嫌いが大きく分かれると感じた。特に妻子の再会をホテルの外で見届け、トラヴィスが去るシーンは、予想はしていたが彼らには別の選択肢があったのではないかと考えさせられる。

現実的な側面から批評すると残された二人は父親がいないという状況でこれから生活することになり、精神的にも金銭的にも苦しい生活が待っている。ジェーンはまた息子を手放してしまうかもしれないし、息子にとって心がつながったと思っていた父を再びなくすことは大きなショックである。確かにトラヴィス自身にも問題があり、一緒に過ごすとまた妻子に迷惑をかけてしまうと考えたのであろうが、それらを家族全員で対処していくのが現実的には一番いい方法であると考えられる。また、爆発してしまったらその時はその時また考える。ジェーンもハンターもそれを望んでいただろう。

 

以上がこの映画を好まない人々の意見であろう。

 

確かにトラヴィスの行動は、自分が妻子のために性格を変え、苦しい思いをするぐらいなら後のことは妻に任せて、かっこいい親父のまま消えようという自分勝手なものだ。しかし、私はこの作品から、監督の考える男の生き様というものを強く感じた。やはり男は妻のためでもなくこのためでもなく、自分のために生きるものだ。たとえそれが他人に迷惑をかけてしまうことであっても。事実、監督のヴィム・ヴェンダースは1968-1993の間に5人の女性と結婚している。どれも妻と別れた年に新しい妻と結婚している。監督自身の考える理想の男性像、そしてアメリカの西部劇に出でくるような男の去り様。男性ならこの気持ちがわかるはずである。

 

私がこの映画を通じて強く印象に残ったのは「赤」という色である。映画の冒頭のトラヴィスの変わった赤の帽子に始まり、トラヴィスは多くのシーンで「赤」のアイテムを着用している。小さな赤い帽子に始まりジェーンを探しに行くシーンでは真っ赤なシャツを着ている。赤を着るトラヴィスからは情熱のようなものが感じられる。少しずつ赤の割合は増えていくが、最後のシーンでは彼は暗めの服を着る。彼の妻子への情熱は消えてしまったかのように。赤い夕焼けをバックに立ち去る彼はまた新しい「赤」を探しに行ったのだろうか。

 

この映画には回収されていない伏線が多く、全体的にぼんやりとした外観をしている。消えた4年間やトラヴィスの靴磨きへの執着、なぜ言葉を話せなかったのか、パリ、テキサスというタイトルとその土地も本編にはあまり影響を及ぼさない。

 

様々な捉え方ができるものこそ芸術であり、1流である。という誰かの言葉を思い出すような作品であった。

 

コメントや訂正があればよろしくお願いします。

 

Tom Nagasawa